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祖母の代から名義変更せず相続人が38名になってしまった事例

2024.08.26

本記事では、祖母の代から名義変更せず相続人が38名になってしまった事例を解説します。

弁護士・行政書士・税理士・司法書士、それぞれ対応できる分野や得意な分野は異なりますので、ご状況にあった専門家に相続手続きを依頼することが重要です。

お客様のご状況

 昭和30年代に亡くなった曾祖父名義の土地の名義変更についてのご依頼を曽孫にあたる方からお受けしました。

依頼人は、土地の名義人である曾祖父の長男の孫なのですが、依頼人の祖父も父も亡くなっており、数次相続が発生していました。

なお、依頼者の曾祖父には、依頼者の祖父以外に子どもが6名いました。

実は、依頼人は、現在自分が住んでいるこの土地の名義変更手続きを行うにあたり、「曾祖父の相続人が、現在何人いるかわからず、その中には面識のない親族も含まれるが、相続の対象である曾祖父名義の土地は、田舎の土地であり、高い価値があるわけでもないので、親族間でもめることもなく、現在この土地に住んでいる自分名義にすんなり名義変更ができるだろう」と考えていたため、知り合いの司法書士さんに相続人調査と相続登記の手続を依頼しました。

司法書士さんの相続人調査の結果、依頼人の曾祖父の相続人は、依頼人を含め、合計38名いることが判明しましたので、相続登記を行うにあたって、この38名の相続人間で遺産分割協議をまとめることになりました。

そこで、司法書士さんから、依頼人以外の相続人37名に遺産分割協議案を送り各人の意向を聞きましたが、37名のうち1名の合意が得られず、手続きは暗礁に乗り上げました。

司法書士さんはこういった紛争となった案件は取り扱えないため、依頼人は弊所に相談にいらっしゃいました。

結果として、本件は依頼人が申立人となって、家庭裁判所に遺産分割調停を申立て、裁判所の審判が得られたため、依頼人は、他の相続人にいくばくかの代償金を支払ったうえで、曾祖父名義の土地の名義を依頼人名義に変更することができたのですが、依頼人は、最初に依頼した司法書士さんに相続人調査の費用と、弊所に遺産分割調停の費用を支払うことになりました。

相続人が多くなればなるほど、紛争につながる可能性は高くなります。

紛争が生じたとしても、ワンストップで手続きをすすめることができる、相続を得意とする弁護士に最初からご依頼いただければ、時間も費用もこれほどかからずにすんだのにと残念に感じました。

相続放棄をした結果…

依頼者の父が亡くなり、遺産は父名義の実家不動産(土地・建物)のみ、相続人は母と依頼人を含めたきょうだい3名の計4名だったため、相続人全員で相談の上、実家を母1人に相続させようということに話が落ち着きました。

そこで、依頼人が法律に詳しい知人に相談したところ、家庭裁判所できょうだい3人が相続放棄をすれば、父の相続人は母だけになるので、実家の所有権移転登記手続きが可能になるとアドバイスされましたので、きょうだい3人は相続放棄の手続をおこないました。

しかし、相続放棄とは、相続放棄をした法定相続人が、初めから相続人ではなかったことになるという手続きですので、父の子ども3人の相続放棄により、依頼者の父の相続に関しての相続人は、配偶者である母と(父の両親は亡くなっていたので)父のきょうだいだということになってしまい、母と父のきょうだい2名の3人の間で遺産分割協議が必要になってしまいました。

依頼人と依頼人の母らは、父のきょうだいとは父の生前から疎遠にしていたため、直接父のきょうだいと連絡をとることがはばかられ、弊所に遺産分割協議の交渉の依頼をなさいました。

弊所で依頼人の父のきょうだい2名に交渉したところ、きょうだい2名は、依頼人らの窮状を察し、好意的な対応をしてくれたため無事、実家の名義を依頼人の母名義に変更できましたが、あやうく依頼人らは、父の遺産の4分の1を父のきょうだい2名に遺産分割しなければならないところでした。

このように、専門家ではない人に相談をし、その回答が誤っていたためにトラブルが生じる可能性があります。

相続だけに限りませんが、不明のことがある場合には、まず信頼のおける専門家に相談することが大切です。

この記事の執筆者
むさしの相続法務事務所・武蔵野経営法律事務所 代表 加藤 剛毅
保有資格弁護士 埼玉弁護士会 第31907号
専門分野相続案件・不動産案件・中小企業法務
経歴2002年 司法試験合格/2014年 さいたま家庭裁判所家事調停官任官就任/2018年 当事務所開設
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