相続税の納税資金の考慮(納税資金対策)
1.納税資金対策とは
納税資金対策とは、換金性を高めた資産などを生前から準備しておき、相続発生後に直ちに相続税を納付しようとするものです。
特に、換金しにくい不動産等を現金化しやすいような資産構成に変えておくことが代表的です。
例えば、すぐに売却できるような更地で持っておくこと、相続までの間に有効活用することが挙げられます。
2.納税資金対策の必要性
財産評価額を下げるなどの節税対策よりも、まずは、納税資金に換価できる資産を用意することによる納税資金対策を検討することが必要と言われています。
その際、相続税課税時点において、相続税の負担額が大きくなると予想される相続人に、換金性の高い資金が分配されるような配慮を遺言書で記載しておくことも大切です。
納税資金対策が必要な理由は、相続人は、多くの場合、相続税の納税資金の工面に悩みます。
なぜなら、納税資金を上回る現金が相続財産になく、相続人自身にもそこまでの現金がないことが多いからです。
たとえ、遺産の中に換金性の高い不動産があっても、不動産の売却に時間がかかってしまうことが多いうえ、売却すると譲渡所得税等の負担の発生もあるからです。
物納する場合も、物件自体が物納要件を満たしていることが求められ、更に物納の手続きに時間がかかります。
しかも、物納が認められないといったケースも多く、その場合には現金で支払わなくてはならず、万一、納付期限が過ぎていれば、延滞税がかかってしまいます。
そこで、相続税の納税のための資金準備をしておく必要性が発生するのです。
3.対策
いくつかの納税資金対策をご紹介します。
ただし、リスクが絡むものもありますので注意が必要です。
短期的なものとしては、
1)銀行から借入する
2)死亡退職金・弔慰金を活用する
3)相続資産の売却をする
4)納税資金の生前贈与をする
5)延納・物納を利用する
があります。
出来る限り計画的に、長期的な視野で取り組まれることをお薦めします。
長期的な対策として、計画的に取り組めることの代表例を挙げると、
1)生命保険に加入する
2)土地活用により賃貸収入を得る
3)賃貸用不動産を譲渡する
どれもリスクを検討する必要があり、弁護士にアドバイスを求めた方が無難な対策です。
4.まず、納税資金の過不足分析から
まずは、必要となる納税資金に対して、相続財産と相続人所有の金融資産(現預金・生命保険金・上場有価証券等)がいくら準備できるかを試算し、相続税を支払う能力があるかチェックすることから始めます。
不足していれば、対策が必要でしょう。
一般に、相続税の支払能力の判定は、
納税資金÷相続税×100
で求めます。
この比率が100%よりも小さければ小さいほど対策が必要です。
納税資金の不足を解消するためには、
(1)節税対策により相続税額を軽減すること
(2)納税資金対策により資金を増やすこと
の両面からのアプローチが必要です。
納税資金対策では、「生命保険」の上手な活用が最も大切です。
終身保険に加入すれば、確実に死亡保険金を相続税の納税資金に充当できます。
支払保険料は相続税の前払いと考えることもできます。
これにより、所有土地等を譲渡または物納することなく、相続税の納税を完結させることもできます。