相続放棄のQ&A
当事務所では相続放棄について様々なご質問をいただきますので、ここではよくあるご質問について解説します。
Q1)亡くなった夫に借金があり、相続をしたくない場合はどうすればいいですか?
A1)相続放棄、または、限定承認という方法があります。
相続放棄は、最初から相続人ではなかったとみなされますので、当然債務を弁済する義務から解放されます。
限定承認は、相続した財産の範囲でのみ債務を弁済し、仮に財産が残った場合にのみ、その財産を相続するという制度です。
いずれも相続開始から3か月の間に家庭裁判所に申立てなければなりません。
限定承認を申立てる場合には、相続人全員でする(ただし、相続放棄した方を除く)必要があります。
また、一度相続放棄や限定承認の申立てをしてしまうと、原則、撤回は出来ません(民法919条)ので、十分に事前調査をする必要があります。
Q2)被相続人の生存中に相続放棄できますか?
A2)相続放棄は、被相続人の死亡後でなければ、手続きをすることができません。
Q3)被相続人の死亡から3か月以上経過してしまったのですが、相続放棄できますか?
A3)相続放棄は、「被相続人の死亡後、自分が相続人になったことを知った時から」3か月以内にしなければなりません。
その条件を満たしていれば、被相続人の死亡から3か月以上経過していても、相続放棄は可能です。
ただ、自分が相続人であることを知っていても、債務が全くないと誤信していたため、「相続の開始があったことを知ってから3か月」を経過しても相続放棄の手続きをとらなかったなどの場合でも、相続放棄できる場合があります。
相続の開始があったことを知ってから3か月を超えている方は、お早目に当事務所までご相談ください。
Q4)被相続人の不動産を売却してしまったのですが、相続放棄できますか?
A4)相続人が、相続財産を処分してしまった場合、不動産は重要な相続財産ですので、相続放棄が認められなくなる可能性が高いと考えられます。
しかし、後から予期しない高額な負債(借金)が判明した場合などには、相続放棄が認められる可能性もあります。
お早目に当事務所にご相談ください。
Q5)被相続人の預貯金を葬式代に使用してしまったのですが、相続放棄できますか?
A5)相当な範囲内での使用であれば、相続放棄できます。
不相当に豪華な葬儀を行った場合等は「相続財産の処分行為」とみなされますので注意が必要です。
Q6)被相続人の使用していた日用品を処分してしまったのですが、相続放棄できますか?
A6)日用品など一般的に資産価値がない相続財産に関しては、処分してしまっても相続放棄の障害にはなりません。
Q7)相続放棄した場合、被相続人の預貯金はどうなりますか?
A7)相続放棄すると相続人ではありませんので、被相続人の預貯金を絶対に引き出したりしてはいけません。
もし引き出してしまった場合には、単純承認とみなされる場合がありますので注意が必要です。
また、相続放棄の結果、誰も相続する人がいなくなった場合、利害関係人等の請求により相続財産管理人が選任され、債権者に分配された後、特別縁故者がいない場合は最終的に国庫に帰属するか、5年あるいは10年経過により預金債権が時効消滅することになります。
Q8)相続放棄した場合、被相続人の不動産はどうなりますか?
A8)相続放棄の結果、誰も相続する人がいなくなった場合、利害関係人等の請求により相続財産管理人が選任され、債権者に分配された後、特別縁故者も共有者もいない場合には、最終的に国のものになります。
Q9)相続放棄の手続き中に、金融機関から被相続人の借金の支払請求をされた場合はどうすればいいですか?
また、相続放棄手続き後に、相続放棄が完了したことを、金融機関に知らせる必要はありますか?
A9)相続放棄の手続き中なので支払うつもりがないことを伝えましょう。
相続放棄の完了を金融機関に知らせる義務はありませんが、支払の請求をされたくない場合は相続放棄の手続きが完了したことを伝えましょう。
Q10)相続放棄の手続き中に、他の相続人から遺産分割の書類に署名押印をするように言われた場合、どうすればいいですか?
A10)相続放棄の手続き中なので協力できないことを伝えましょう。
遺産分割協議に参加する事は「相続財産の処分行為」にあたりますので、応じてしまうと相続放棄が認められなくなる可能性があります。
ご注意ください。
Q11)相続放棄が取り消される場合はありますか?
A11)相続放棄の手続きが完了した後でも、相続財産を隠したり、使ってしまったりすると単純承認とみなされ、相続放棄の効力を失う可能性があります。
Q12)相続放棄を撤回することはできますか?
A12)相続放棄の手続きが完了した後で、相続放棄を撤回することはできません。
しかし、騙されたり脅されたりして相続放棄をした場合等の一定の事由がある場合、相続放棄を取り消すことができます。
Q13)夫が、多額の借金を抱えたまま亡くなりました。
相続放棄をしたいと思いますが、生命保険金の受取人が、妻である私になっています。
相続放棄をすると、生命保険金は受け取れなくなるのでしょうか。
また、生命保険金を受け取ってしまうと、相続放棄ができなくなるのでしょうか?
A13)受取人が、被相続人以外であるならば、生命保険金を受け取っても、相続放棄には影響がありません。
相続放棄後に生命保険金を受け取ることもできます。
受取人が、亡くなった方以外の者に指定されている場合、指定された者の固有の権利として生命保険金を受け取ることができるからです。
したがって、この場合には相続放棄していても生命保険金が受け取れるのです。
また、生命保険金は相続財産に含まれませんから、生命保険金を受領しても、相続財産を処分したことにはならず、相続放棄が可能です。
ただし、生命保険金の受取人が亡くなった方になっている場合、生命保険金は相続財産となり、これを受け取ると相続放棄ができなくなります。
ご注意ください。
また、この場合、相続放棄をすると生命保険金は受け取れません。
Q14)相続財産全体がプラスかマイナスかわかりません。
価値のわからない宝石もありますが、近くに鑑定してもらえるところがないので時間がかかりそうです。
こんな状況では3か月ではとても相続を放棄するかどうかの判断が終わりそうにありません。
こうした場合、どうしたらいいのでしょうか?
A14)3か月の期間は、家庭裁判所に請求すると伸ばしてもらえます(「熟慮期間伸長の申立」といいます。)。
伸ばしてもらう理由などにもよりますが、プラス3か月ぐらい伸ばしてもらえることが多いです。
伸ばしてもらったが、結局、プラスマイナスがよく解らない場合には、限定承認という方法もあります。
これは、プラスの財産の限度でマイナスを返済する方法です。